巡回展覧会と日本的美術館の効能

いきなりだけど、日本には世界でもまれな程、美術館(art museum)が多い。博物館も多いけど。各県に確実に県立美術館があるし、小さな規模の市でさえ市立美術館を持ってたりするし、財団経営の私立美術館も数多く存在してんの。


で、よくある批判が、収蔵に力を入れてないということ、これは確か東京都美術館かどっかから始まっていて、日本の、特に公立美術館はギャラリーに近くて、企画展の方が常設展より人を集めている。というか、企画展の無い期間の常設展はガラガラなのがデフォルト。常設展、つまり収蔵作品がしょぼいんだな。


なぜこういう批判が存在するかといえば、まぁそんな状態じゃ市民が日常的に足を運ばないとかそういう題目もあるんだけど、一番は欧米との比較。欧米の美術館は、常設展で稼ぐ。アメリカのメトロポリタン美術館なんかは、これでもかというぐらい古今東西超有名な作品が展示されている。入場料も高いんだけどね。


じゃあこの日本的美術館のメリットはなんなんだっていうと、有名作家の巡回作品展が多数開催されるってこと。今でも、ルソー、ルノワール、ダリ、若仲といった有名な画家の作品展が日本全国をまわってるんだな。大体県の美術館をまわってるから、日本全国をほぼくまなくまわってるはず。


これはつまり、日本国民はわざわざ東京とかの大都市に出かけなくても、自分の住んでいる地方で有名なアート作品を見れると言う事。欧米は性質上一極集中してしまうから、どうしてもフランスだったらパリに行かないと見れないだろうし、アメリカならボストンとかニューヨーク、ロサンゼルスまで行かないと見れない。


もちろんこれは日本が今お金を持っているからこそ出来ているんであって、中国とかインドが勃興してそれらの作品をより高額に借りっていったらこの仕組みは崩壊するんだけど、それでもこのある意味公平にアートが行き渡る仕組みはなかなか捨てたもんじゃないと思うんだな。