ものづくりを教える時の考え方

ものづくりは結局そのひとの価値観に行き着く、というのが最近の実感で、本とかえらい人から話は聞いてはいたけれど肌感覚としてそう思うようになったのは、ものをつくる系統の授業のお手伝いをして、たくさんの大学生のものづくりを見て来たから。自分が教える側になって客観的かつ網羅的に授業の履修者を見ていると大局観が掴めた。そして過去に先生達、先輩達が僕にくれたアドバイスの持つ意味がはっきりと分かってきて、あのとき分からなかった自分……とかなり情けなくなったり。それはともかくとして、相手にものを教えるときはそこを踏まえるといい感じ。
SFCのような環境でものづくりをするとなると、学生は大体二つのパターンになっている。ひとつは企画からアプローチするひと。もうひとつは技術からアプローチするひと。おおざっぱに言うと文系と理系で前者、後者に別れる感はある。そして前者のパターンは魅力的な企画書を作りプレゼンもうまいが成果物がしょぼく、後者のパターンは確かにものは出来ているがどこかつまらない……というのが大体の授業。
ここから伸びてもらうのをサポートするのがスタッフ側の仕事で、基本的に相手がなにをしたいか、それが作る体験のコアはなんなのかを聞きながら、それに沿うアドバイスをしていく。前者も後者も多くの場合、ワンアイデアで行こうとするので、そこをじっくりと本当にそれがいいのか?という問いかけて相手がしたいことを引きずりだしていくのが理想的な展開。ひとがしたいこと、というのはそのひとの価値観に基づいているので、最終的に出来るものにそのひとの価値観が反映されると出来が良くなる。逆に最初のワンアイデアに引きずられるとどこかで見た事のある何かになってしまう……と思う。*1
それを踏まえて、ものすごーく実地的なアドバイスにすると、技術にアイデンティティを持っているひとは技術が道具として見られない時があるのでそれに歯止めをかけてあげる。企画にアイデンティティを持つひとは自分が出来る範囲を限定しすぎることが多いので、その制約をとりはらってやる。という感じ。そうするとそのひとらしさが自ずと出てきていい感じになると思ってます。

*1:そこまで事例を見ていないから断言は出来ない…