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最近感じた現実でのSF感 12点

2016年『SFだ』と思った、SF的想像力が刺激された事件ベスト10 - 見えない道場本舗
gryphonさんの記事をまねて、今年に限定せずに一気に書いてみた。順不同だけど基本的には時系列で最近のことを先にしました。

1. ポケモンGOで人の行動が変化したこと

Pokémon GO
一夜にして街中に人が溢れ、ポケモンの世界のようにみんなが町中でボサッと突っ立てる状態が生まれて現実がポケモン世界になってしまったのがすごかった。

2. 増田から火がついた『日本死ね』騒動

保育園落ちた日本死ね!!!
改めて読んだら短くて韻を踏まれた詩的な文章だった。『二条河原の落書』の現代版だけど、まさか増田から生まれるとは……っていう面白さがある。二条河原と同じく歴史に残るんだろうなぁ。「匿名ブログ→SNSで話題→国会の質問で引用される→流行語候補になる→選考委員が批判される」という流れはオーソン・スコット・カードか!っていうSF感。個人的には初めて政治と繋がりを感じられたこともあり、質問者の議員さんはそんなに好きではないが、これを引用したことに関しては良い仕事をしたと思う。

3. 中華スマートフォンタブレットに仕込まれるバックドア

萩原栄幸の情報セキュリティ相談室:電子機器に潜むスパイウェア騒動から身の安全を考える (1/2) - ITmedia エンタープライズ
士郎正宗の『攻殻機動隊2』でアイジャックという電脳手術時に電脳に視界を盗むバックドアを仕掛けるテクが荒牧素子のリソースのひとつとしてサクッと出て来るが、構造が全く同じでやばい。『攻殻機動隊2』では設計・製造段階で入れると電脳倫理法のおかげで見つからんよねーってなってたのに対して、現実には電脳じゃないから見つかったわけだけど、プロセッサレベルで仕掛けるやつもあるらしいし、それだと本当に見つからないかもしれないのでSFと地続きだなぁって思った事件。

攻殻機動隊 (2)    KCデラックス

攻殻機動隊 (2) KCデラックス

4. Stuxnet

核施設を狙ったサイバー攻撃『Stuxnet』の全貌|WIRED.jp
この事件「アメリカとイスラエルが電子線によってイランのウラン濃縮を撃破した」でまとめられるけど、どこのSFだよって思うよね。

5. ロシアのアメリカ大統領選への干渉

CNN.co.jp : オバマ氏、ロシアへの報復表明 米大統領選への「干渉」で
ロシアのStuxnetに対する意趣返しにも見える。嘘ニュースをばらいたってやつはプロパガンダとしては古い手法とあんまり変わらないけど。

6. WELQ問題に端を発するコンテンツファーム

DeNAのウェルク(Welq)問題関連ニュースまとめ - まなめはうす
AIよりも先に低賃金で人間に書かせる未来が来てしまった……。SFはAIが生身の人間が書くよりもより評判を得るAIライターを描いてきたが、そんなものよりももっとグロテスクな現実がやってきてしまったのである。ただの現代的な内職として見ると今までと構図が変わらないんだけど、きらびやかな印象のあるネット業界からのアプローチだからなぁ。
ところで『NAVERまとめ』に本来期待される役割をまなめさんのこのニュースまとめは担っていると思います。

7. みんな雨雲レーダーを見るようになった

weather.yahoo.co.jp
人類が雨に対する新たな感覚を持ったと言える意味でSF。小説とかに出てくる特殊な種族が3時間後の天気を予測してみせるみたいなやつをみんな持つようになってしまった……。雨雲レーダーに関しては僕はアーリーアダプターで、携帯からWebにアクセス出来るようになってこれ見られるようになってから、自転車での通学スタイルが大きく変化した。僕は一応ダイアルアップからのインターネット世代なので、天気予報を電話で聞くサービスから雨雲レーダーに15年くらいで移行してしまったのがマジでヤベェって思うわけです。

8. ソイレントの流行

完全食:ソイレントの夢 « WIRED.jp
アメリカを知っている人と知らない人で反応に差が出ると思うんだけど、アメリカを知っている側としてはさもありなんなニュース。たぶんアングロサクソン以外には広がらないと思うし、手法をみるとすごくローテクでSF的ではないがニュースとしては面白かった。

9. ロボットスーツに保険適用

厚生省、ロボットスーツ「HAL」に保険適用 歩行のリハビリに活用 - ITmedia ニュース
日本だとHALだが、ドイツでも適用始まってたような。ロボットスーツは10年以上前から見てきたけど、健康保険が適用されるとなると途端に身近に……というか福祉機器なんだっていう驚きも。つまりトヨタのウェルキャブとかとロボットスーツが同列になるというのがちょっとおもしろい。

10. パピーズ騒動

風雲ヒューゴ—賞2015 - SF行為記録保管所
アメリカSF界で繰り広げられているカルチャー戦争の犠牲になったヒューゴー賞 Sad & Rabid Puppies | 洋書ファンクラブ
ポリコレ風潮に対する揺り戻しのひとつだと思うけど、この事件は「イーガンの『万物理論』に出てくるジェンダー闘争だ!」って思ってアガった。これは日本でもおきえた問題だけど、SF界隈の歩んだ歴史が違う結果避けられた感がある。というのも、日本とアメリカではSFのカテゴライズのされ方が歴史的に違うからで、アメリカは未だにSFとファンタジーはまとめて同じ賞で扱うし、ラノベジュブナイルSFとしてSFに包括されている。日本だとラノベということでデカい市場が切り離され、ファンタジーもどういうわけか切り離されてアメリカに比べて極めて狭い範囲で賞レースが行われている。*1日本でさえラノベとSFの関係って慎重に扱わないと炎上するわけで、それが同じジャンルで同じ賞を争うと考えると……ねぇ。

僕はポリコレに関しては断然ポリコレ支持派なのでパピーズ側にはならないけど、一点だけパピーズに同情する点があって、それは最近のアメリカの賞を取るSFがつまらないという点である。アメリカの賞を総なめしたアン・レッキーによる『叛逆航路』は三部作で二部まで読んだがまぁつまらなくて、人称代名詞をSheに統一して性別が分からなくなり、登場人物同士の性的な関係は示唆されるが、それが男性と女性の関係なのかは分からないみたいな仕組みを入れているのだが、そんなものがない日本語からするとだからなんだよ!!!!ってつっこみたくなる……というのはさすがに難癖だからそれは置いとくが、その仕組みがお話につながるわけではなくて、その他のSF要素もすべてガジェット的に扱われてて、日本だとSF作家以外の作家、特に純文学の人が書く作品のほうが近いはず。*2 同じく割りと最近アメリカの賞を総なめにしたバチガルピもポリコレ作家て感じで、外挿して描き出したグロテスクな未来で現実に警告するタイプの作家で、短編(第六ポンプ)だと面白いんだけど、長編(ねじまき少女)だとポリコレの説教臭さが出過ぎてよくない。だからアメリカの賞に対して面白くねーよ!ってキレるのは間違ってないんじゃないのって思うというわけだ。

叛逆航路 〈叛逆航路三部作〉 (創元SF文庫)

叛逆航路 〈叛逆航路三部作〉 (創元SF文庫)

第六ポンプ (ハヤカワ文庫SF)

第六ポンプ (ハヤカワ文庫SF)

批判ばっかになってアレなので、これは余談だけど最近のアメリカのSFで面白い作家はケン・リュウ。最初に出た短編集の『紙の動物園』もよいし、その後に出た楚漢戦争がモチーフの中華ファンタジー『蒲公英王朝記
』もすごくいい。科学と技術に対する深い造詣でサイエンスをきっちり練り込んでいて、話の作り方もうまくてリーダビリティも抜群で非の打ち所がない!
紙の動物園 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

紙の動物園 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

11. センサーでわかる幸福感

日立、集団の幸福感を測定する技術を開発 - PC Watch
開発者が本を出していたけどまだ読んでない。幸せだから笑うのではなく笑うから幸せであるという話は結構研究者の間では有名なのだけど、感覚的にそれは認めがたいのが普通だと思う。技術をただ突き詰めた先にディストピア性を感じさせる典型的に優れたSF的ニュースだと思う。

12. 寿命が近いAIBO

“寿命”近づくペット型ロボットは今 NHKニュース (Web Archive上のNHKのニュース)
WELQもそうなのだけど、生物の頑健性って結構すごい。特に人間は日本人だと80年持つのが当たり前なのだが、通常80年持つ機械は家庭にはないから、大体のご家庭で一番古いものは人間だったりすると思う。そんなわけで機械の生命が人間より先に旅立つのは至極当然のことなのにものすごく不思議に思えるニュースだ。これを発売当時に想像できた人はすごい……。

おわりに

まとめてみると人間の強さを感じるなぁ。僕らは機械に期待しすぎてしまい、人間には期待しなさすぎるのかもしれない。

*1:日本SF大賞は別で映像、漫画、イベント、事件なんでもござれで、特に今年の最終候補リストは正直に申し上げて意味不明なことになっている

*2:石川達三とか思い出した