風の谷のナウシカ

風の谷のナウシカ 1 (アニメージュコミックスワイド判)

風の谷のナウシカ 1 (アニメージュコミックスワイド判)

 ナウシカのマンガ、って言ったら、映画とは全然違う骨太な長編。ストーリーが全くと言っていいぐらい違うの。とは言っても基本は同じ。主人公のナウシカは運動能力抜群で頭もいい、才色兼備のお姫様。蟲を愛していて、人の世界も蟲の世界も救おうとする救世主。


 ただマンガの方は、同時並行的にナウシカ以外の人達も描かれる。ユパとかクシャナ、その他沢山。そのお陰で、世界観が重厚になって、物語が重層的になり、立体感が出てくる。奥行きのある世界。読んでると混乱するときもあるけど。


 このナウシカ以外のキャラの中で圧倒的に魅力なのがクシャナ。映画では完全に敵役として巨神兵を復活させたりしてるけど、マンガではナウシカを凌ぐと言っても過言ではない程に魅力的。厳しすぎる程の現実主義者で、冷酷な指揮官。だけど、ナウシカと出会った後だけど、蟲の襲撃を受けた時、物陰で子守唄を歌ったり。その後にもう二度と私はこんなナウシカみたいなことはしないと宣言したり。かと思えば、さらわれて気絶して目覚めてから、殺戮しまくる。無駄死にした兵士の為に泣くという、生まれもってのカリスマ性。そして目指すのは真の王道。


 ナウシカがどうしても、挫折しても救世主としての一本道を進む為に単調になりがちになってしまうから、余計に道をさまよってるように見えるクシャナの存在が浮かび上がるんだよね。ナウシカは聖人とか仙人とか、もう神的な存在で、作中でも神としてある部族に扱われていたりする。そのときナウシカは私は神じゃないと言うんだけどね。で、一方のクシャナはと言えば、すごく人間的に描かれる。民草に寄り添う王様とでもいうかな。苦悩して王道を掴む。もうかっこいいー。


 ストーリーの方はと言えば、終盤の流れが見所。明らかになった世界の秘密に対してナウシカが取る態度には...おーマジでって感じに。読み終わった後に余韻がなんとも独特に残ったよ。破綻なく長編として上手くまとめられてるから、沢山の人に、映画だけではなくこちらも読んでみて欲しいんだな。全巻まとめて買っても3000円ぐらい。新刊でね。しかも大判コミック。