All You Need Is Kill

「出撃なんて、実力試験みたいなもんじゃない?」敵弾が体を貫いた瞬間、キリヤ・ケイジは出撃前日に戻っていた。トーキョーのはるか南方、コトイウシと呼ばれる島の激戦区。寄せ集め部隊は敗北必至の激戦を繰り返す。出撃。戦死。出撃。戦死―死すら日常になる毎日。ループが百五十八回を数えたとき、煙たなびく戦場でケイジはひとりの女性と再会する…。期待の新鋭が放つ、切なく不思議なSFアクション。はたして、絶望的な戦況を覆し、まだ見ぬ明日へ脱出することはできるのか。

近所の書店でハヤカワのところの平台に置かれていて、書店員の策略に見事はまって買ってしまった。短くまとまっているので、一夜で読みきって、これを今まで読んでいなかったことを後悔した。まず、話としてよくできていた。短くまとまっているのは、無駄なところがないからで、ほぼすべての描写が過不足ない状態。飽きる前に話が展開し、それでいて読者が置いてきぼりになることもない。多視点でまったく同じ描写を使ったりするものの、ループしていることを読者に強く印象づけるのみで、くどさはない。またループであることの説明もそこまで厳密に深入りすることないものの、納得させられるような説明になっていて、SF小説としてキチンと成り立っていた。が、この小説を読んでいて最も印象に残ったのはSSぽさとかファンアートぽさだった。つまり、ゲームの2次創作としての小説として面白かったということ。
2004年の小説を捕まえて割りと最近の流行であるSSぽいって言うのはなんなんだって気はするんだが、そう感じてしまったものはしょうがない。SSってのは特定のアニメ、ゲームの世界観を使って作者の妄想をぶちまけるのが基本なのだが、たまに複数のソースを合体させて得体のしれない何かになってることがある。本作は作者のあとがきとかインタビューを見る限り、ゲームの構造を小説に持ってくるということで、基本のSSとは在り方がちと違う。ただ得体のしれない方とは結構似ていて、それはどういうことかいというと、得体のしれないSSは複数のソースを合体させた結果、それぞれのゲーム、アニメが持つ世界観から飛び出て、ゲーム自体、アニメ自体のジャンルの世界観になってるからということなんだと思う。結果、ゲームの愛好家としての僕は、本作は読んでいると作品全体の構造に共感して、SSぽさってものを感じたのだろう。
プレイヤーにスキルの向上を求めるタイプのゲームが好きな人には特にオススメ。入手性もよいのでぜひ。