スパークジョイと脳

こんまりの本質はモノひとつひとつに対してスパークジョイする(=ときめく)かどうかで、そのモノを残すかどうかを決めることである。それはNetflixのこんまりシリーズを見たり、本を読めば分かる。この本質、実は脳の仕組みと合っているし、さらにこんまりは片付けの順番を指定することでその脳の仕組みとの相性を最大に活かすようにしている。

脳の仕組み、特に感情を大雑把に解説すると、感情そのものを司る扁桃体と理性的な状況判断をする前頭前野という2つのモジュールがある。これらは外界から得た情報に対して並列に処理しているのだが、より素早く判断を出すのが扁桃体だ。一方で前頭前野はかなり処理に時間がかかるようになっているが、扁桃体の働きを制御し判断を修正する役目を持つ。感情は生存のために発達し、そのために高速に判断を下すと言われている。

下記参考記事の特に重要な部分を引用する。
感情はどこから? 実は生存をかけて脳が下した判断|ヘルスUP|NIKKEI STYLE

感情には、ものごとを「評価する」という機能がある。好ましい対象には好意的な感情、好ましくない対象には不快な感情が発生し、それによってその後の行動が変化する。感情を作り出す中心的な働きをするのが、扁桃体

そう、スパークジョイとは扁桃体の働きそのものなのである。だからこんまりはモノに手で触れることを勧める。それによって自身の感情に集中し前頭前野の横槍を防ぎ、自身の感情がモノをどう判断するかを待つのである。

こんまりメソッドで服を整理した時、買った時は見た目的に気にいったが、着ているときになんとなく不快になっている服(シルエットが崩れていくとか、ズレてくとか、単純に肌触りが悪いとか)をいくつか発見し、処分することになった。吊るしてあるがあまり着ない服たちだった。意識的に感情に集中しないと、買ったときに見た目が気に入ったという記憶に邪魔されてしまい、今まで捨てなかったのだなと気づいた事例だ。

さて、感情は誰でも持っているのになぜ片付かないか?という疑問が当然起きる。これに対する回答は、感情は常に評価を下しているが、それをモノを持つ基準に普通しないから、である。感情をモノを持つ基準に据えてしまったこんまり先生の慧眼はやはり素晴らしいものがあると言わざるを得ない。

こんまり氏のイノベーションのもうひとつは片付けの順番指定(服が一番最初)である。最も前頭前野の横槍を考える必要がないのが服である。というのも服はだいたいの人は大量にあり、代替可能性が高いので単純に感情のみに従って整理しても必要なものが残るからである。そして、大量に触れることでスパークジョイの感覚(=感情)を掴み、他のより前頭前野の横槍が大きいモノに対しても、そこを切り分けて判断することが出来るようになる。

前頭前野はストレスに弱いと参考記事に書いてある。前頭前野の働きが弱っているストレス時に感情に沿わないモノがあったら負の感情が出てしまうが、こんまりメソッドにより捨ててあれば、ストレス時でも負の感情が少なくなり、回復が早まるはずである。たぶんこれが、こんまりが主張するこんまり後に人生の成功を掴むという話なのかもしれない。

こんまり氏はスピってるという批判をしばしば目にした。しかし、スピってるのは感情を元にしているのだから当然とむしろ言っていいかもしれない。論理的に片付けず、感情で片付けるからこそ、こんまりメソッドは片付くのだから。

おまけ

こんまり氏の書籍を読むならビジュアル多めのやつがオススメだ。スパークジョイとは関係ない畳み方とかは断然こちらのほうがわかりやすいからね。理論のエッセンスも問題ない。

マンガで読む人生がときめく片づけの魔法

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イラストでときめく片づけの魔法

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