最近のフィギュアスケートへのお気持ち

アドベントカレンダーも実は途中*1なのだが書きたくなったので書く。個人ブログなので。

フィギュアスケート関連でツイート*2していると、その解釈わたしとは違うなぁって解釈で誰かの選手のアンチなどにRTされたりして悲惨なことになりがちで、毎回キレてたのだが、その時のお気持ちはおおむね一緒なのでここにまとめておく。五輪やってるしね。

採点によく文句を言っているのは、色々な選手がその人らしさを最大限発揮した素晴らしい演技を現在、そして未来に渡って見ていきたいから、である。高難度エレメンツにつなぎを入れ込んだ細切れ演技が評価されるの良くないわよ〜ってこと。

で、採点について細かく文句言っていくので、現在のシステムのおさらいである。フィギュアスケートの今の採点方式は確か2002年のソルトレイクシティ五輪で採点不正が発覚し、2003-2004シーズンから導入され、2004-2005で本格採用されたシステムだ。それまでの採点方式との最大の違いは、6.0満点からの減点による順位点方式から各技積み上げの絶対点方式への変更であった。おおむね20年運用されてきて、細かくルールは変わってきたが大きな変更はされていない。そこそこ完成して安定したシステムと言えるだろう。

PCS(いわゆる芸術点)について

若いスケーターの芸術点が高く出がち

これは女子で起きている問題で、エレメンツの間をとにかく振り付けで埋めて高難度ジャンプを飛んでくる人たちの芸術点が評価され過ぎる印象がある。特に今だとワリエワの点数が高過ぎる。ワリエワはもっと美しく腕を動かせる余地があるのに、現状で10点満点だしてしまうのはいくらなんでもやりすぎ。また、同じボレロという演目で過去の名演*3と比較したらやはりワリエワの方が下になる印象である。カロリーナのポーズとワリエワのポーズ比べると洗練度合いの違いは明らか。

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もちろんエレメンツの間に濃密なつなぎがあるんだ!っていう擁護は出来ると思うのだが、エテリ組の多くの若手はクロス*4がどうも綺麗じゃなくて無理やりスピードを出すために足を漕いでいる印象があり、ただでさえ上半身がめちゃくちゃ動いているのにより忙しなさが出てしまっている。そういう忙しない演技をいくら音楽がカバーするとはいえ満点評価するんですか?ってのが疑問。

エテリ組の例外としてはコストルナヤで、ジュニアの頃からクロスがきれい。これが大体18歳くらいになってくるとクロスの足漕ぎ感がなくなりエレガントに変わってくるのだが、エテリ組の多くは18前で引退していくわけだ。悲しいね。

じゃあ誰が満点とるべきなのか?

カロリーナはもう現役ではないので、現役スケーターを出すなら宮原知子だろう。スケーティングの美しさは数々のスケーティングの美しいスケーター*5を生み出してきた佐藤信夫コーチの折り紙付き*6。2020-2022のFSで滑っているトスカはスケート史に残るプログラム。

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エテリ組の欠点である、エレメンツ間につなぎを豊富に入れるが細切れ感がすごい、の正反対のスケーティングだ。曲と一致している上半身の振りでかつ、それが足元のスケーティングと合わさっていて、曲調に合わせて加減速を行っている。その上にジャンプ前と後そしてジャンプ自体のすべてが曲に合わさって一体となったつなぎ目のないプログラムになっている。腕の動かし方ひとつとってもスケーティングの方向と合わせてより大きな表現になるようにしているのが分かると思う。これが現時点で最高の表現力だ。

正直に言って、現役のスケーターでは群を抜いており、この全日本でももっと他と点数差あっても良かったと思う。3回転ジャンプ一つ分くらいは抜けているだろうという感覚である。が、今は高難度ジャンプをノーミスする若手の評価はぐんぐん上がるし彼女の演技自体もジャンプミスが多くなっており、あまり差はついてない。それでもしかしジャンプをミスしても彼女のエレガンスは他を圧倒していると思うのだ。

独創性評価されないのもなぁ……

もうひとつPCS採点に文句を言いたいのは、独創性。このトスカ、かなり独創性が高い。今まで色々な人がやってきたトスカに、また新機軸のトスカを作っている。これは色々なトスカを見てもらうしかないのだが、特徴的な音楽のところでのトスカらしさは今までのプログラムを参照しつつ、その他のポージングや動きにはかなり新しいものが詰め込まれている。で、独創性はあまり評価されない。また引き合いに出すのはワリエワなのだが、今季のボレロ、正直に言ってよくあるボレロですねなのだ。もちろん、うまいのは認めるのだが、ワリエワ自身やエテリ組がよくやっているムーブメントをボレロにしていますねって感じで既視感は否めない。

男子だと宇野昌磨がやるプログラムはかなり珍しい振り付けになっており、もうちょい評価してもいいんじゃないの?と思うわけだ。PCSは5項目なのだが、もう1項目独創性という項目つけても良くないですか?

大きな大会で採点が甘い

GPS以外の小さな大会でゲロ甘採点になったりするが、基本的には大きな大会*7の方が点数が出やすい。これなぜかというと演技者が多く、前の演技者より良い演技に点数を上げていくと後半の選手にはより良い点数が出やすくなるという構造的問題があるからだ。その割に絶対的な点数として試合関係なく比較されてしまうので、そこはもう少し手を入れなよって気になる。

評価高い人へ採点が甘い

全体の評価が高くなると、その人の微妙なエレメンツの評価が高くなるときがある。今回の五輪でも鍵山優真の団体戦FSの4Loが明らかにステップアウトなのに加点がついたのは、ちゃんと採点してくれ〜というお気持ちである。あとネイサン・チェンの個人戦SPの3AのGOEは高すぎ。直前のステップから助走がかなりあって入る3Aで、着氷もあまり流れないので+1か+2だろうと思ったら+3+4がバカスカ出るので、そういうのやめなよって本当に思うね。

これかなり個人批判に思われるかもしれんから予防線貼っとくけど、これはその選手ではなくジャッジ批判です。GOEとかはかなり厳しく採点基準が決まってるんだけど、結構守られないことが多く、それは良くないよってことである。あと予防線2なのですが、こういうジャッジ批判はジャッジは〇〇(任意の選手の名前)押しだみたいなこと言う人多いんですが、どちらかというと心理的な問題だと思うので採点方式の工夫をするべき。

五輪は採点傾向が甘い

これ本当に良くないのだが、普段の試合と比べてエッジエラーと回転不足が取られにくくなる傾向がある。いやその人3Lz/3Fにエラーやアテンションいつもついてるじゃん!って人につかなくなったりする。普段の試合なら回転不足でしょってのもあったりした。まぁそろそろ選手たちも織り込み済みになってるかも。

まとめ:現在のフィギュアスケートに言いたいこと

エテリ組への文句で書いたが、女子は18歳ぐらいからクロスがきれいになるのだが、18歳あたりでプログラムも化ける印象がある。突然、大人の演技になっているのだ。そうするとジュニアとはまた違った味が出てきて、その人らしさがグッと出てきて見るのがより楽しくなるのである。そこから24ぐらいでまた化ける印象あって、出来たらそこまで続けてほしいんだけど、みんな大学卒業ぐらいでやめてしまいますわね……。

スケオタを続けていると高難度ジャンプや高難度エレメンツを見ても面白いのだが、その人しか出せない味同士が対決しているのが面白くなってきて、その成長や化ける瞬間を目撃出来ることこそが喜びになってくる面がある。そんなわけでスポーツの範疇でもうちょい表現力の点数の付け方を再考してみなさんのスケート人生を伸ばす方策を取ってくれないものですかね。

色々文句書いたのだが、根幹は色々な選手がその人らしさを最大限発揮した素晴らしい演技を現在、そして未来に渡って見ていきたいということ。その精神の下でやっているツイートを、なんも知らずに選手批判とかアンチ活動とか陰謀論でRTされたら激おこってことよ。

*1:メモにはあるのでアップロードするだけなんだけど、それが面倒

*2:特に採点への疑義とかで

*3:ここではカロリーナ

*4:フィギュアスケートの基本的な動きのひとつで、後ろ向きに滑っているところ

*5:荒川静香、小塚崇彦、浅田真央

*6:確か朝日の連載で言及してた

*7:チャンピオンシップ系