中国は何回、北からの侵入で滅んだのか?

追記:なぜ悪の帝国は気候の厳しい北方で勃興するのか問題: 不倒城
この記事を見て、ビデオゲームヒストリーにおける中心地のひとつ、我が日本に多大な影響を与えた中国は、しょっちゅう北の異民族に滅ぼされてたイメージがあるなと思いだした。そして、じゃあそのイメージは正しいのか気になって、タイトルになった「中国は何回、北からの侵入で滅んだのか?」の答えを探ってみた。基準としては王朝(一応南朝も入れた)が滅ぶ原因として北方民族の侵入が主なものである、というあたりに設けたが、なかなか判断が難しかった。

中国歴代王朝滅亡原因表

中国歴代王朝の滅亡原因表を作った。王朝及び滅亡原因、中心民族のソースはすべてWikipediaである。

王朝 滅亡原因 中心民族
次王朝 -
衰退 -
次王朝 漢民族
前漢 禅譲 漢民族
次王朝 漢民族
後漢 衰退 漢民族
西普 北方民族 漢民族
東普 禅譲 漢民族
北魏 次王朝 北方民族
宋(南朝 禅譲 漢民族
斉(南朝 禅譲 漢民族
梁(南朝 禅譲 漢民族
陳(南朝 禅譲 漢民族
禅譲 漢民族
禅譲 漢民族
北方民族 漢民族
次王朝 北方民族
北方民族 漢民族
次王朝 北方民族
中華民国 次王朝 漢民族
中華人民共和国 継続中 漢民族

明らかに北方民族によって滅んだ例は3例であった。意外と直接的には滅ぼされていないことが分かった。
万里の長城春秋戦国時代、つまり秦が統一する前から建設が始まっており、北から異民族が来るのは中国では日常のことで、直接的に滅ぼされるというよりはむしろ漢民族に取り込まれていった、といったところか。実際、漢民族とは血ではなく中国の文化を受容しているかどうか、みたいな解釈をよく見かける。大陸はしょっちゅう勢力範囲が変わって大変である。
ところで中国と言えば漢民族だと思って中心民族に漢民族表記をしたが、秦は漢の前の王朝なのでもっといい表現があるのでは?と思うのだが便宜上漢民族表記にした。
あと簒奪が名目上は1回もないのが意外だった。中国と言えば簒奪みたいに思ってた。その代わりと言ってはなんだが禅譲が大変多く、普通に国同士が戦って滅ぼされることは少ない。

ヨタ話

まとめてみると中国の中心である中原は華北のことを指すが、実際には漢民族華北の支配に失敗して意外と異民族の手に落ちてたりする。そして華南の方はずっと支配してたりするので、中国の本当の中心は華南の方なんでは?って感じがする。日本もなんやかんやで中国や朝鮮などの影響のある畿内よりもあとから支配した東北のほうがそれらの影響が出にくくなって日本感強いので普遍的なことなのかも。

漂白剤の選び方パート2

漂白剤の選び方 - ゆうれいパジャマ
まさかのこの記事の続きだ。Utadaの『Automatic PartⅡ』をBGMにしながら読んでくれ。結論として汗の黄ばみにはハイター使えだったが情報が更新された。前回の記事で手に入らなかった粉末の酸素系漂白剤を手に入れた結果、それで充分だったことを報告する。
粉末の酸素系漂白剤が良いというのは、あちこちで見かけてたものの割りかしどこのドラッグストアに行っても酸素系漂白剤は液体のワイドハイターか液体のPBのものしか売ってなくて、わざわざネットで買うのもめんどくさいしと思っていたら、近所のドンキにオキシクリーンなるものが現れていた。

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ちょっと高いが早速買ってみて試しにいきなりつけ置き洗いに行ったところ、指定の量入れてるのに塩素系のように肌を刺激してきて、皮膚が溶ける感じがあり、これは効きそうだなと思ったら案の定効いた。いちばんひどい脇の汗ジミがつけ置きで消えるので手間もかからず体力温存、きれいになって精神にもよい。
ということで、粉末の酸素系漂白剤は店頭で手に入らなくてもネットで買う価値があることを皆様にお伝えして今日はお別れとさせてもらう。なお、前回から更新されたことは実はもうひとつあり、塩素系であるハイターを使うときは、キッチンハイターを使うと服の一部分、まさに脇の黄ばみなどをピンポイントに落とすときは便利だ。ではでは。

人生に意味は無い

宇多田ヒカルの新曲『真夏の通り雨』が1曲ループして聞いてても全然飽きないのだが、2回目から涙が止まらず、曲も涙もひたすらループしていた。

人として魅力的でない人

ハフィントンポストにマックで働く人の種類のひとつとしてあげられていた。この言葉を出したことで記者が自分のことを人として魅力的でない/あるで分けた時にある側にいるという自覚がすけて見えて、本当に恐ろしかった。自分はリア充であるというような主張。人に魅力というものが存在し比較されてしまう、してしまう、ということが僕はとても怖い。どうせ自分に魅力というものがないならないでそれに気づかない目と脳を持ちたかった。でもその目があるからこそ(自分に魅力がある人が自分の魅力に気づいてないことは結構ある)エキスパートとして評価される面は確実にあるが、それで不幸になるならそんなものいらないし。


お金も技術も仕事もあるけど、なんもない。
だから今日もアマゾンのウィッシュリストを提出できない。誕生日は親友にしか教えない。人生に意味は無い。

SFファン交流会2016年3月例会 テーマ:イーガン世界を読み解く

●内容:
『クロックワーク・ロケット』を皮切りに、SF作家イーガンの宇宙SF三部作が開幕! ということで、その第一作目である『クロックワーク・ロケット』刊行を記念して、イーガンの描く世界を皆さまとともに楽しみたいと思います。
http://www.din.or.jp/~smaki/smaki/SF_F/

行けないな〜と思ってたら1週間勘違いしてて行けたので、グレッグ・イーガンのファンとしてタイトルの会に行ってきた。
Webサイトでは『中村融さん(翻訳家)、板倉充洋さん(理系研究者)』の2人が出演となってるが、イーガン作品のメインの翻訳者である山岸 真さんもいらっしゃって、むしろメインでお話をする形に。イーガン作品の翻訳は、この日に出演した3人によってなされているので、イーガン翻訳者のオールスターというわけだ。参加費500円でこんな豪華なゲスト……ありがとうございます、という会だった。
SFファン交流会2016年3月例会「イーガン世界を読み解く」 - Togetterまとめ
Togetterで大体の内容はまとめられてるんで、出てないところを中心にざっくり自分が面白かったところを書いてみる。→ 以降は僕の感想である。

山岸さんのお話

  • アメリカのSFはスリップストリームやライトなのが主流。アメリカでイーガンの出版はあまり芳しくない……。イギリスはちょっと違う
    • → アメリカでイーガンは人気無いってやつだ!やっぱそうなのかーて思いました。
  • 翻訳するときに会ったりメールもしていない
    • → 分からないところは聞いてるのだとばかり……。一切連絡取らない翻訳ってあるんですね。

出演者全員のお話

翻訳の分担

今まで山岸さんがひとりで訳していたが、今回、中村さんに入ってもらって章ごとで分けて訳した。科学的な部分は板倉さんが下訳をして山岸さんがそこから翻訳。

その他
  • 「イーガン、訳すもんじゃないですよ」
    • イーガンは文が長く、英語というよりもむしろ日本語に近く、オーストラリア英語なのかイーガン独自の表現なのかかなりクセがある。
    • ex. "be going to" を "will" のように使ったりする
    • → 『ゼンデギ』でなんだこの読みにくい文の連続はって思い、改めて他の作品読んだらそこまででもなかったので、そのへんの違いも気になりました。質問すればよかった……。
  • プロット上なくてもよいものをいれがち
    • 仮説めっちゃ立てるけどばっさり切る
      • ex. 『クロックワーク・ロケット』ヤルダの宇宙漂流シーン 第17章(紙版ならp.440)
        • 「物理を学んでないと宇宙で死ぬ」
      • リアリティのためにいれているのでは
      • → 僕は一応エンジニアとして、こういう問題解決のために右往左往するも変な方向から解決したりするってことを多々経験してきたので、リアリティが増すというかむしろこういうくだりがないと不自然に感じます。問題をポンポン解決するな!というか。
  • 数式を文章にして出すのやめてほしい
    • → たしかにw
  • 2巻はつらい。3巻は面白い
    • 2巻は量子力学のお話。1巻が相対性理論の話でこちらの世界より分かりやすいが、2巻はこちらの世界より難しい。
      • → イーガン最難関になるのかな……。
  • 1巻冒頭のおとぎ話と2巻は関係がある
  • 〈直交〉三部作は電子がない世界だがそれに直接言及していない
    • → この世界なんでコンピュータないんだと思ったらそういうことだったとは。
  • 水もない
    • 海、雲、雨がなく、血が流れない
    • 翻訳上、宇宙船という言葉が使えない
  • 言葉の頻度リストを作って古典的な作品のそれと比較することで上記の特徴(電子がない、水がない)が見えてくる
  • 〈直交〉宇宙における相対性理論は『白熱光』でまちがえて見つかったやつになっている
    • → そんなことになっていたとは……これに気づける人世界に何人いるんですかね?
  • イーガンいわく〈直交〉三部作の社会のジェンダー観は現実のそれのメタファーではない
    • → 今回イーガンの長編で最も現実に近いジェンダー観だったというか、ヤルダの扱われ方とか一部書き直したらそのまま現実で起きてるセクシャルマイノリティの受難なので、それはないだろって思ったし、白熱光のようにメインの話にあんまり入ってこない形にできたはずって思うと、やっぱりそれはないだろって思うんですよね。
  • 女性に女言葉を使う理由は2巻の最後で分かる
  • 名前がイタリア系なのはイタリアでイーガンが人気だからサービス?
    • → アメリカでは人気が出ず、イタリアと日本で人気なイーガンってなんなんだ。

おわりに

楽しい会でした。出演者の方、運営の方、ありがとうございます。
板倉さんによる〈直交〉宇宙の物理学講座が、プロジェクタとの接続が悪くてなかったんですが、公開された資料見てもやはり難しい……。最後のスライドの楽しげな雰囲気は伝わってくる。
資料 - JGeek Log
数式を文章化したり、図は出すけど結局わかりにくかったりという話で、iTunes版のインタラクティブなやつ*1とかパランザム名義でアップロードしてるYoutube動画*2とか、その辺の話も個人的には聞きたかったな。質問しろって話だけど。Vimeoには解説動画みたいなのも上がってますよね。ただインタラクティブなイーガンってファルスのルシがコクーンからパージみたいな話になってしまう気も。


Orthogonal / Light on Vimeo
この会終わった時、やたら疲れてて家帰ったらすぐ寝込んで知恵熱かなと思ってたんだけど、次の日もダメでなんかやたら長引いて2週間近く体調悪かったりする。

おまけ

この会に行った所、福本さん*3という方が参加者に『グレッグ・イーガン エッセイ集』の無印から3までの三冊を配っており、ありがたく頂いた。イーガンが自分のサイトにアップしているエッセイを日本語に翻訳したもので、いま検索した感じでは物理的なコピー本としてか存在していない。原文の方はいまでもイーガンのサイトで読めると思う。
グレッグ・イーガン エッセイ集』収録のエッセイは以下の2つ。

  • Born Again, Briefly
  • Anatomy of a Hatchet Job

前者は自身の宗教的体験を書いたもの、後者は『白熱光』刊行後の批判に対して理解できないなら書かなけりゃいいだろって皮肉っとものとなっており、どちらも実にイーガンって感じのエッセイだ。イーガンの自己紹介という形になってると言っていいだろう。
グレッグ・イーガン エッセイ集2』は4つのエッセイと作品刊行年表が収録されている。イーガンは2002年から2006年は執筆をやめておりその理由であるオーストラリアの移民政策に対しる活動についてのエッセイになっている。

  • No Sugar
  • The Razor Wire Looking Glass
  • Letters from Forgotten
  • Interview with Greg Egan

最後の"Interview with Greg Egan"に日本のイーガン読者として面白い事実が書いてあった。移民政策に対して活動していた結果、執筆は出来ず、さらに支援のために金も消えていき、"どんどん減っていく貯えと時々入る日本語訳の印税だけで生活"していたいとのこと。自分がイーガンってめっちゃ面白い!!!って読んでたらその印税が抑留されているオーストラリアへの移民への支援になってたとはという世界の広がりを感じるエピソードでしたね。なお、オーストラリアへの移民は中東や南アジア系が多く、イーガンは活動を通じて彼らの何人かと知り合った。その結果として、それらの移民の出身国の中でも科学技術が発展し高等教育を受けた人間の多い場所であるイランを『ゼンデギ』の舞台に選んだそうな。
グレッグ・イーガン エッセイ集3』は映画評が3つ。

  • Avatar Review
  • An AI Pal That Is Better Than "Her"
  • No Intelligence Required

最後のレビューは"Her", "Ex Machina", "Interstellar"の3つだ。どれもまぁシンプルに辛辣だ。特に脚本の部分に関しては容赦無い。実にイーガンらしい。
とまぁ、とってもイーガンなエッセイ集であり、まとまって出版されると嬉しい。全国1億のイーガンファンのみんなも読みたいよね。
(おまけは2016/07/21追記)

*1:http://gregegan.customer.netspace.net.au/BIBLIOGRAPHY/Ebooks.html#Diaspora

*2:下に貼り付けたやつ、音がめっちゃ安っぽくイーガン先生お手製なのか気になってしまうが音にも意味があるのかも。でも白熱光のムービーと使い回してる気が……

*3:https://twitter.com/fulgurit