『インターステラー』の感想

過去の下書きから出てきたのでアップ。簡単にまとめるとSF文学ファン的にはSFガジェットの使い方が大味すぎて微妙。

インターステラーの評判がSF界隈からも良いから見てきた。ざっくり言うとSF映画として全体を楽しんだかというとそうでもなく部分部分はSF的にも楽しいし、普通によい映画だった。

映画というメディアの枠内で見ると本当によく出来た映画だと思う。娯楽映画として必要であろう一般性として、CMでも訴求される「愛」の物語として成り立つように作っているにも関わらず、愛を否定的に語っているという見方も出来る2面性を作っていて、いや、それ一般的に良いこととされてるけどどうなの?っていう派閥にもグッと来る設定にしているバランス感覚は凄い。3時間もある上映時間の中で、だれずにアメリカで今起きている問題なんかも盛り込みつつ、ワームホールを使い別の太陽系に行き、高次元の空間が……ってなる話を両立させるのはとてもうまい。

僕としては、作中の人物のほとんどが善悪の二面性を露わにし、出てくる科学者の半分がマッドサイエンティスト、人類の今後を決める時に意見に私情を挟んでることを指摘された途端に愛には力があるのよって語りだす科学者にノーという主人公とか超最高だと思ったし、作中世界ではかなりの教養の持ち主が、家族への医療を拒否してたりで、人間性というもの絶対信じてないだろっていう話が沢山あるのが最高だった。

なのだが、詰め込みすぎの弊害がやはりあり、それがSFとしての世界の強度を低下させている。その最たるものとして、何が地球をダメにしているか明確に分からないということ。「オクラがだめになりました」「とうもろこしもだめになる」という風に栽培できる植物が順々に無くなっていくんだけど、作中ではその原因について何も言わないから謎。主人公が宇宙に行く理由が、地球がダメになるから宇宙へ行きますというものなんだが、その根本があやふや。地球、荒廃しちゃった描写はあるのに、それがどういうもんなのかを明かしてくれなくってう〜んってかんじ。ここは科学者による説明パートでさっくり1分とかそれこそ一言とかで良いから、あ、それはダメだねってなること言って欲しかった。そう言われないと、ラムジェットエンジンがあり、人間に危害を与えずに滑らかに動き、ほとんど人間と変わらない受け答えをするロボットが作れるほどの進化を見せたテクノロジーに対してチグハグ感が大き過ぎて……ってなった。映画というメディアの負の面もあって、出てくるロボット、宇宙船のUIなんかがもはやレトロヒューチャーにしか見えなかった。

ただ一方でこの辺の話って自分がその辺の技術の難易度の高さを知っているからという面もあって、そうでない人にとってはSiriとインターステラ―のロボットの差はそんなにない可能性はあるなぁと。なんで、映画の作りとしてはそれで正しいと思う。僕はフィクションにはその描く世界における一貫性を重視して欲しい人間で、今回はSFパートで評価が低くなったが、僕と同じ価値観でも僕と持っている知識の範囲が違う人が見ると一貫性はあるということになるのかもしれない。