2020年都知事選 左派だから選びやすくてよかった

都知事選と言えば誰も選べないでおなじみ。しかし今回は左派が統一候補に変なのを持ってくる仕草をしてこなかったので、むしろ前回よりも選べて良かった。ウェブサイトで主張と政策を調べて比較したのでせっかくだからと記事にまとめたんだけど、一文にまとめるなら有力な候補者の中で宇都宮氏が最も政治的課題を網羅的かつ定量的に認識しており、問題解決の方策も提示しているからオススメですといったところです。

候補者 山本太郎  宇都宮けんじ 小池ゆりこ 小野たいすけ
政治課題の把握力
政策の充実度
Webサイト
箱物政策 自然史博物館 平和祈念館 特になし 江戸城天守再建

名前の順番は左翼から右翼というやり方ですが、もっと違った並びもある気がするなこれ。

政策について

政策が一番重要なので2つに項目分けた。「政治課題の把握力」は、まず都政の問題をどの程度把握しているのか?という能力。つまりこれが問題だ!と言った時に、それをどの程度定量的に把握しているか?ということ。「政策の充実度」は政策そのものがどの程度具体的か?都民の生活が向上するか?で判断したものの、ここは僕の政治的信条と近い方の政策が上になってるはず。特に中立的になろうと判断したものじゃないので流し読み推奨。

政策そのものは各候補のWebサイトに載っているもので比較した。
https://taro-yamamoto.tokyo/policy/
http://utsunomiyakenji.com/policy
https://www.yuriko.or.jp/policy
https://ono-taisuke.info/policy/

政治課題の把握力

本来、現職の小池氏が一番強いはずなんだけど、実績アピールでは使う数字を政策には全然入れてこなくてさすがにダメでしょう……となった。しかもどうしてそれが課題なのかが数字がない状態で本当に微妙。小野氏もまたキャッチフレーズを批判する割に政策や現状認識に数値入れてこないのでコンサル出身でしょ!って言いたくなった。

そもそも右派2人の方が数値に強いはずではと思うが、今回は左派2人のほうが強く、山本氏だと内閣府の調査を引いており、『DVについて』の項目では下記のように言っている。

DV(家庭内暴力)対策は「実態調査・被害者支援・自立支援」の3本柱を強化します。内閣府調査では既婚者の3人に1人がDV被害に遭っているとされています。都で独自に実態調査を行います。また、相談支援体制の強化や相談員の専門性強化と待遇改善を行い、DV被害救済の質の向上を図ります。

宇都宮氏は『安全・安心のまちづくりを進めます』の項目で下記のように現状認識と対策を示している。

刑法犯は検挙件数・人員ともピークだった1984年以来、ほぼ半減し、少年犯罪は約 三分の一に減少し、殺人など凶悪犯罪も減少しています。東京の治安が悪化しているわけ ではありません。他方、薬物事犯の約半数は暴力団が何らかの形でかかわっており、自殺者の多くが無職で、少年犯罪や来日外国人犯罪では失業者の割合が高くなっています。不 況を背景とする街頭犯罪も増えています。このように、犯罪は貧困とコミュニティからの 孤立(社会的排除)とに相関しています。いま真に必要な防犯政策は、貧困の縮減、人び とがコミュニティに包まれて安心して暮らせること(社会的包摂)を基礎とした政策です。

政策の充実度

右派2人は政策も具体性が乏しくてキャッチフレーズの政治を批判する小野氏本人がキャッチフレーズだけな上に水道民営化するらしいのでネオリベ感がすごいです。そして現職の人は政策になぜ数値を全然盛り込まないのか……。

山本氏の政策で特に良いなと思ったのは、コロナ対策の総額15兆円の経済支援で

「スピード感」ではなく、「スピード」を重視。

と書いてるところ……も良いんだけど、実際にどうやって総額15兆円調達するか?を国会議員の経験を踏まえて地方債をこうやって発行しますと詳しく書いてて大変良い。みなさん、この部分は是非ご一読を。

最後に宇都宮氏。政策集、まず量から他候補を圧倒する49ページのPDF*1なんですが、ただ量があるだけではなく現状認識を踏まえての対策になっているんですね。気になったやつを箇条書するとこんな感じ。

  • 学校給食の完全無償化
  • 都立大学の将来的な無償化
  • 都営住宅の新設、家賃補助制度の導入
  • 公契約条例の制定
  • 出前福祉制度の導入(プッシュ型の福祉)

徹底的に貧困対策なので、例えば学校給食の無償化も、長期休暇期間も給食をする政策打ち出しているわけ。住宅政策も既存政党の持ち家に甘々な政策と大違いで一番下の層が恩恵受ける政策がたくさん打ち出されている。出前福祉制度は、福祉を使うのがスティグマなら自治体側からアプローチするという手法の提案。政策でこれ書いている人は初めて見たので、プッシュ型て補足いれたけど、安倍首相が災害対策で使うのが大好きなので言葉を乗っ取てあげたらいいんじゃないかなと思って書いてみた。

正直に言うと、原発避難者政策(本来原発被害を被った自治体が国の支援の下でするべき)と道路政策の部分でちょっと違うかなーて感じ。ただ、昔ながらの左派の人って感じでもなくて産業政策の部分で

新しい発想での「気候危機」対応型の起業を促進するための「グリーン・ニューディー ル(気候危機に対応した経済政策)起業推進センター」を設置します。100室くらいの 小型ラボ(研究室)を2年期限で家賃無料での貸し出し、その期間に起業することを後押 しします。関連施設では、3D プリンターなど最新機器を無料で使用できるようにします。 技術開発やマーケティングの相談に乗るスタッフも配置します。運営も含めて若い人を優先することとし、若い世代の発想での企業を応援します。

と言ってるのは面白い。政策単体で切り出したらむしろ維新の候補が掲げていそう。これ「グリーン・ニューディール」政策の一貫として打ち出していて、これは気候変動に対応したテクノロジーやインフラに投資して経済を持続的に発展させようということらしく、この発想によって財政拡大左派が日本で復活してくれるといいなぁと思った。

まとめると宇都宮氏の政策は日本の政治課題とその対策の詰め合わせになっている。その政策の充実は他候補を圧倒していてもはや都知事選のみにしておくのはもったいないと思う。

Webサイト

サイト自体のわかりやすさ、見やすさ、使いやすさと代表的な動画ひとつで比較した。小野氏と宇都宮氏はとっちらかっていてイマイチで、特に宇都宮氏はhttps対応もされてないし、昔の都知事選の動画も出していてそれはやめたほうがいいんじゃないかなーてなった。

小池氏はサイト自体はわかりやすく、動画も具体的なことを言わずにイメージだけ良い感じを作り出すいかにも小池氏って感じ。動画、ディストピアものそのものって作りで、小池氏が子供と一緒にいたりPCの前で電話したり料理をしたりタブレット使って仕事する雰囲気出したりと、仕事出来る感と親しみを同時に作ろうとしていて面白かった。僕は評価しないものの、広報として優れてはいると思う。ただ本当にディストピアっぽい。

山本氏は政見放送を作り込んで字幕付きでサイトの一番目立つところに置いている。俳優からの国会議員としてのバックグラウンドが存分に使われており、最も優れているのは間違いないだろう。是非一度見てほしい。

総合評価

そもそも左派なので最初から宇都宮氏か山本氏に選択は絞られていた。では、どちらか?となると圧倒的に都知事として都政の問題を認識し、政策が充実している宇都宮氏となった。これが、前回だとそのどちらもアレな人が左派の統一候補だったので、今回は楽でしたね。陣営はもう少し発信の仕方を変えたらいいと思います。そして宇都宮氏の政策の具体性は群を抜いていて、国政政党の2019年参議院選挙の政策とも比較したんだけど、自民、立憲、国民、共産よりも上回っている。合意が少なくて済む個人の政策だからかもしれないけど、国政にも反映されるといいね。

山本氏は宇都宮氏という都政に精通した候補がいることで、消費税増税という国政課題を掲げているのになんで自治体の首長選挙なんかに出ているの?という根本的問題が目立ってしまったので戦略ミス感がすごい。どうぞ国政に集中して。

おまけ:箱物政策について

都立平和祈念館は、昭和館を発展的解消させて国立のほうがいいんじゃないかなーとは思うものの、多摩に自然史博物館を作るのも江戸城天守再建も割と全部やってほしい。そういう意味で現職が何もあげなかったのは残念だが、変なやつを本当に実現されても困るのでまぁ……。

*1:2020/7/1時点