急須を買いに常滑へ4 出会い編

ゆとベントカレンダー⑤

昨日のバドミントンで体が破壊されており、ガーミンの記録を見ると、ワクチン打った次の日みたいなデータがでた。引き続き昨日の話。生徒時代にスポーツをやっていたころよりも、身体感覚の解像度が上がっていた。ラケットにシャトルが当たらない時の修正とか、指摘されたことへ質問して指摘を具体化して理解するとか、できたのだ。正解はここからあそこまでの範囲にあるはずなので、両極端から試してみるか、とか仕事で身につけたメソッドもまた役に立って、昔よりスポーツの上達早くなった。まぁ、生徒時代と違って怒られないしね。

昨日の分と今日はラップトップで書いてるので、たくさん書ける。

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道のつきあたりにあるお店って、様子を見て帰ろうとすると、誰も見てなくてもなんとなく気まずいから、少し気が引かないだろうか?僕は引く。そんなお店が、急須と出会ったお店だった。つきあたりにあるだけではなく、軒先に看板がひとつあるだけで、店舗名も入っていいのか不安になるし、木の格子がはまったガラス戸越しにしか中が見えない店だった。たぶん格子越しにほんの少し見える店内の展示の様子に惹かれて入ったんだと思う。入ってみると、3階建ての窯場跡を店舗に転用した広々としたお店で、展示のセンスも種類も抜群。特に照明が常滑随一良かった。窯場の機械・器具と思しきものもそのままインテリアに転用しているのもまた良くて……。

1,2階が店舗で、1階には急須以外や少し常滑焼の主流とは外れた急須が置かれていてので、オシャな方向なのかなーと思ってたら、お店の人に話しかけられて急須を探しに来たなら2階にもありますよとのことで2階へ。2階はすごかった。作家別に急須を中心に作品を並べてあるのだが、並べることで現在の常滑焼の状況とそれぞれの作家の個性が見事に浮き彫りになってたわけ。決して量が多いわけではない。しかし、それらの作品群の向こうにあるジャンルがしっかり見える素晴らしいキュレーションだった。

都会のこういったお店だと店頭に出す種類を絞ってしまって、もっとお店全体のブランディングにしてしまう。ジャンル押しはせいぜい季節展示の台や棚だろう。物自体は当地の1流のものを持ってきてるのは分かるのだけどね。やはりこれが産地パワーか。

下調べやネットで検索した結果、常滑焼の急須というのは伝統的な形があって、表面が滑らかで、そこに和柄が入ってたりするというイメージを持っていた。このお店に来て、表面のテクスチャーの部分がぜんぜん違う、というか作家物はむしろそこで勝負している人の方が多いことを知った。それに加えて伝統的な形に見えて形状も細かく違う。急須というのはかなり複雑な形状なので、僅かな違いが大きな印象の違いをもたらす。形状と表面のテクスチャーが相まってひとつの急須を構成しているのだが、それらを比べる楽しみといったらね、本当に良かったね。お店の人がちょくちょく表面をどう加工しているのか、どんな技法があるのか教えてくれたのも本当にね、良かったね。

初見でこれいいなと思った作家さんのやつを脳にメモしつつ、全体を見た。その後に、いいなと思った作家さんのものを本格的に手に取ったり蓋を開け締めしたり試してみたら*1、お店の人が水入れて試してみますか?と聞かれて試させてもらった。ま、悪くないかなと思ってたのだが、こっちの繊細な作りの作家さんのも試してと言われた。うちの娘も使ってるけど、ガサツなのにこれを扱う時は所作が丁寧になるんですよって言われて、どんなセールストークだ?!となりながら実際に試したらとても軽くて手に馴染んでこちらの方が使い心地が良い……!となった。そこからウンウン唸って、見た目的には最初のヤツのほうがきになるけど圧倒的に使い心地が違う………!繊細と言っても壊れそうな感じはしないな、となり、勧められた作家さんのものにするぞ!と決めたらちょうどほぼ同じ形状で2つあったので、さらに唸ってエイヤ!と決断。ようやくお買い上げである。

包んでもらっている時に、四方山話で銀座にも急須をたくさん取り扱っているお店あるらしいことを教えてもらう。銀座、もっと探らねば。

このお店、散歩道の中間地点あたりである。当初急須を買う予定であった陶磁器会館や急須館は終点である。通常常滑でお店がやっているのは17時くらいまで、早いお店だと16時。そして、もう16時になろうとしていた上に金山駅に17時という約束があった。終点付近はもう無理だなとあきらめをつけつつ、散歩道沿いのお店をサクサク見ていく。

西日が差し込んでくる坂の上のお店のテラスで手をかざして陶器を見ていたら、どうぞお店の中で見ていってください、ここ本当に夕方は太陽がすごくてって言われて、常滑の人ってみんな親切やねと思ったりした。サッと入ったお店で1個妙に気になった湯呑なのかぐい呑なのか分からないのを、なんの会話もなくサッと買った。モダンで東京のセレクトショップに置いてあるやろなというお皿もありつつ、窯がやっているお店なのでなんとなく生活感というか親しみやすさのあるお店で、それも良かった。そのお店の先か後ぐらいに、実際にモダンな東京のライフスタイルセレクトショップみたいなお店があったのだが、これが急須を買った店の関係者がやっているお店で、袋で気づかれて店舗の奥も見ていってと言われてしまった。ここでしまったと書いたのは時間に焦っていたから笑 こちらのお店、雑貨もあるのだけど、やはり面白いのは急須だった。特に奥にあったもの。血なんでしょうかね。もっとじっくり見たかったな。

登窯広場から先の方がお店が多いのだが、どうもこれは駐車場が登窯広場の向こうにあるからで、そりゃ確かにこの辺の人は車で来るからお店出すのも駐車場側がいいよね……ということに今更気づいた。東海地方の法則である。

次回、最終回。
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*1:常滑のお店全般、結構高い作家物でもさわるなとは書かれてないし、触ってて怒られなかった。まぁ怒られるお店もあるかもですが

急須を買いに常滑へ3 やきもの散歩道編

ゆとベントカレンダー④

誘われて社会人サークルのバドミントンに行った。昔はこーいう知り合い全然いないのかなり緊張してたな〜と思いながら参加。仕事で積んだ社交スキルで、もうなんも緊張しない自分がメタ的に分かって内心笑った。

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やきもの散歩道に入った途端、駅にはいなかった人が現れて観光客らしき人がチラホラ出現。かなりどこから現れた???感あるが、東海地方らしい駐車場からの方が実質正規ルートというやつである。現れたと言ってもチラホラで、散歩道にある焼き物が置いてあるお店には大体デフォルトで人が客、店員ともにいなくて、のんびりと見て回れる。

散歩道、2にも書いたが雰囲気が面白くて散策したくなるエリアになっているのだが、その中でも飛び抜けて雰囲気のある隠れ家カフェがあった。

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お店の名はnuu。時間があればカフェ利用したかった……

このカフェ、入り口が2つあって、写真はそのどちらも撮った。素敵な道を建築によってさらに魅力を追加する作りで、アレグザンダーが提唱した建築のパターンランゲージの話を思い出す作りだ。

カフェの写真を撮って道を進むと坂に差し掛かる。土管坂である。地域の名主の館である廻船問屋瀧田家とセットでやきもの散歩道の中心を構成している。館の方も拝観して江戸時代の建物?良いわねぇと展示物と共にざっくり見て出る。まだ、これ!という急須を見つけていないので内心焦りつつ、しかしまだ時間は大丈夫だろうとそこそこじっくり展示を見てしまった。だって日本史の教科書に出てくる菱垣廻船とか樽廻船の廻船だよ?!高校生の頃にこればもっと日本史の点数上がってた気がする。まぁ好きだから学年トップを争ってたんですけど。

散歩道、実質山なのでとにかく坂が多い。登り切ると見晴らしの良い無料休憩所がある。座るのはタダという社会の間で暗黙に共有されたルールが存在*1する。東海地方の良いところである。

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これは土管坂ではない坂

土管坂から下っていくと登窯広場。ここの周辺は近代の常滑焼の歴史がそのまま残っている。かつて坂の土管を作った巨大な登窯を中心に構成されている。ここの展示工房館も小規模だがまた面白い。外にあるデカい瓷は戦時中に海軍から発注されたもの。このまま狸の顔を上に描きたい。

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展示工房館内部の説明もじっくり読みたかったが、そろそろ時間に焦りがあったので、撮影して次へ向かった
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登窯広場の無数のタイルで構成された壁。焼き物の街ですなぁというオブジェだ

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登窯自体も面白いので一見の価値あり

登窯広場の周辺から一気に焼き物を売るお店が増える。ここでようやく急須に出会うのだが、それは次回に回します。

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*1:都市部、リニューアルされた名古屋市のテレビ塔を囲む久屋大通公園でも、座りたい人全員分を賄えそうな量のベンチが設置されている

急須を買いに常滑へ2 常滑到着編

ゆとベントカレンダー③

相変わらず客先の仕切りが下手だなぁと思いつつ、すでに指摘したことあるのでまたすると角が立つから放置して、懇親会の酒を飲んだ。プレミアムと書いてある瓶をプレモルと思って飲んだら不味いノンアルビールだった。

このシリーズはスマホで書いてるんだけど、1000文字くらいまでは行ける。しかし、それ以上になると適当に書いて推敲しまくるタイプなので厳しいね。本日はようやく常滑の話。

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休日の昼下がりに名鉄常滑駅に着いた。世界的陶磁器産地で名古屋からも遠くないので観光客に溢れてるやろと思っていたのだが、駅で降りた人数が10人くらい。地図をもらうために観光案内所に行ったら客は誰もおらず、手厚い歓迎を受けて、マンツーマンでめちゃくちゃ説明して貰えた。

急須を買いに来たと正直に言うと、やきもの散歩道という観光ルートを回ってから陶磁器会館と常滑焼急須館らへんに行きなさいとアドバイスを受ける。散歩道には個人作の良いヤツあるのよと言われたのだが、この時点では個性とか求めてないし別に量産品?とかの普通の赤いヤツで良いんだけど……と思っていたが、観光案内所の人の方が正解だった。

とこにゃんも見ていって!と言われたがこちらは行かず。観光案内所には急須も一点だけめちゃ高のが置いてあって人間国宝のヤツだったと思うのだが、さすがだなと思えるクオリティであー急須の町て感想だ。

駅出てすぐの大通りの坂を登り、町の中心の山、いかにも城がありそうな小山に向かう。それがやきもの散歩道である。散歩道のスタートでありゴールである陶磁器会館が坂上にあり、そこに向かう坂の法面には常滑焼の様々な招き猫が等間隔に埋め込まれている。この招き猫たちがまたモダンなものからキッチュなものまであって混沌としており、産地の懐の深さを見せつけてくる。

散歩道に入ると窯から煙が立ち上り、建物がひしめき合っている。道と建物と敷地が溶け込んでどこが窯でお店で民家で私道なのか行動なのかはたまた庭の道なのかもう分からない。生活の香りもしつつ観光地ぽさもありビジネスの場の感覚もある。そして空いたスペースには常滑焼の赤い土管や焼き物が置かれているのだ。

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急須を買いに常滑へ 下調べ編

ゆとベントカレンダー②

久しぶりの忘年会をしたら東京都の会食制限推奨が4人以下から8人以下になったことを知る。それはさておき、常滑に行った話をする。するが今日は行くまでの話。

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茶漉しだけ使ってたのだが、やはり急須と言う文明の利器が欲しくなった。その時点で常滑焼が思い浮かび、軽くネットで調べた。ズから生まれたボラこと私なので、手間増えるのは絶対に避けたい。調べてみたところ、陶磁器の急須は、水で流すだけのお手入れで良いといういくつかの記事を発見しYouTubeで確認。これならスポンジ触らなくて良いし、茶葉の片付けをスタイリッシュなステンレスの三角コーナーにしたら、今よりむしろ手間とストレス減るはずと目算を立てた。

ネットの次は実店舗。東京のいくつかの店(AKOMEYAと伊勢丹新宿店らへん)を回った。店舗に行くとやはり急須は常滑焼がドミナント。そして素人にも分かる高めの物と普及品の造りの違いがあった。特に蓋のハマり具合を見るとそれはもう歴然としていて、それでいて大した値段の差ではない。じゃあ買いなよという感じだが、造りの精度以外に色、テクスチャー、大きさ、形状、取手、柄と、あらゆるオプションの存在を感じさせられたので、こんな少ない選択肢の中で?名古屋ではいつも大量の陶磁器が展示される中で選び出していた記憶しかないですが?と東京という概念に対して煽っている自分を発見したので現地行きを決意した。愛知に別の用事もあったし。

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