枝野幸男氏による不信任案趣旨弁明演説を読んだ

媒体は『緊急出版! 枝野幸男、魂の3時間大演説「安倍政権が不信任に足る7つの理由」』というハーバービジネスオンラインから出た本。 高校「政経*1」教科の政治当事者による集中講義って感じで、とても面白くかつよくまとまっていてオススメ。特に勧めたいのは、与野党っていつも対立してて野党って意味ないんでしょ?くらいに思っている方。現政府与党と野党の対立は本質的に過去と違うので。箇条書きで感想まとめた。

政治の教科書として

  • 今国会の会期中に判明した統治機構の劣化・破壊を分野ごとにまとめて指摘しているために教科書的
    • まとめたらなってしまった感がつらい……
  • 国会議員、官房長官の経験が生きていて、読んでてとても面白い
    • ex. 災害対応は前例を越える必要があり、政治家の判断が欠かせない
    • ex. 国会審議の具体的な進み方
      • 経済の委員会で政府提出法案の審議が終わっているのに野党法案の審議に入らない点とか
      • 与党の部会→総務会、国会の委員会→本会議の法案審議の流れとか
  • 極めて教育的で、ある種パターナリスティック
    • 自身を保守と主張するのもまぁ分かる

野次も含む聴衆とのコールアンドレスポンスがある演説

  • 本だけどその感覚が伝わってきた
    • 自党議員のみならず、他の野党議員、与党議員そして国民に向かって話している
  • 使う言葉が平易で意味が通っていてまとも
    • それを3時間演説するのは凄い……
  • 与党議員が野次るであろうポイントを作りきっちり反論して野次を逆手にとっている
    • ex. 野党は対案がない、審議拒否はズル休みなど
  • 諦めない姿勢*2が出てたのが良かった

良くないなと思ったところ

  • 現在のアベノミクス財政支出を拡大と言ったり、建設国債発行を咎めているところ
    • 経済学者曰く現状の財政規模は緊縮的なので事実と異なるはず
    • また災害規模の拡大対策としてインフラ整備・再整備は急務だろう
  • ちょっと嫌味なところが多め
    • 加計理事長と安倍首相の友人関係をゴルフ仲間と揶揄するところとか
    • 対立嫌いな今の世の中*3的にはあまり出さない方が支持が拡大すると思う

本として良くないところ

  • 枝野氏や寄稿者よりもハーバービジネスオンライン編集部が最も党派的
    • 「魂の」というタイトルは煽り過ぎ。もっと冷静な感覚の演説
    • 編集部注は事実ベースのみで書いたほうが良かっただろう
      • 意見的に書かれているところが見受けられた

*1:いい教科だったのに無くなっちゃうね

*2:自分のような野党支持者でも徒労感が激しく諦めがちなので

*3:今井絵理子氏の「批判なき政治」は社会的に特に若い層には広く浸透した考えだと思う